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吉村 篤一
1.総評
今回のコンペは湖北長浜という地域における、小規模な住宅地の街づくりに対する住宅設計のアイデア提案と集会所の実施設計を求めるものであった。応募総数は住宅のアイデア提案より集会所のほうが多いという結果になった。これは、やはり実際に建築されるものの方が魅力があり、また考えやすいと判断する応募者の気持ちの現れであると判断するべきなのであろうか。私自身はどちらかというと街づくりに対する住宅の提案のほうに魅力を感じていたし、地域の特徴を生かした街づくりという、これからの時代にふさわしいテーマであるとも思っていた。集会所単体ではそれほど地域の特徴を表現した街づくりという位置づけがむつかしいし、建築単体の設計のみに終わってしまうことになるわけであるが、どうもその方が単純で応募しやすかったのかもしれない。いづれにしても、両部門とも力作が多く、審査にも熱が入ったが、両部門に共通の関連あるテーマで応募された作品が少なかったのはやや残念であった。
■ 住宅のアイデア提案全般について
私たちの求めていたものは、この地域の街づくりに対する「デザインコードの提案」と、それに従って設計された場合の町並がどのようになるか、ということであった。審査に当たってはデザインコードと実際のプラン、立面等がうまくリンクし、住宅そのものが個性的で質も高く、かつまちなみとしても特徴のあるものを選ぶよう心がけた。入選作はいずれも長浜という地域の特徴を考慮して、内外空間のつながりやまちなみの連続感を大切にし、しかも画一的な街にはならないよう考慮されたものとなっている。
■ 集会所提案全般について
集会所のほうは個性的で多様な提案をしているものも相当あり、単体の建築として魅力ある作品が多かったが、建設コストや積雪に対する考慮がやや足りないと思われるものが目に付いた。また、住宅のアイデアと関連した作品が少ないのが意外であった。最優秀案は、フレキシブルな空間対応が可能で、工事コストのことも考慮されコンパクトにまとめられている案が選ばれることになった。
2.提案個別の講評
■ 最優秀賞:藤木隆男案 提案された5つのデザインコードのなかで、特に「ピロティーとはなれ」および「開かれた中庭」の2つが、好ましい住空間を構成している重要な要素であろう。このことにより、外部と内部の関係がまちなみの構成に変化をもたらせながらまとまりのある街を形成できると思われる。
■ 入選:水井 敬案 デザインコードの提案という点では、「光庭」、「辻子」、「テラス」というやはり外部空間に関する要素によるものであり、それらが住空間の魅力とまちなみの構成に好ましい影響を与えているところが評価されたといえよう。
■ 入選:野原 卓案 長浜の伝統的な町家に特有の格子やスリットをテーマとしたデザインコードにより住宅のファサードをデザインし、まちなみを構成するという手法である。プレゼンもきれいでわかりやすく、住戸プランとファサードとの関連性がもっと積極的に表現できていればさらによくなったであろう。
■ 入選:豊田健太郎案 「まちにわ」と「いえにわ」という、非常に単純でわかりやすいデザインコードにより、パブリックな外部空間とプライベートな外部空間とを住戸のレイアウトによってはっきりと区別し、街全体が緩やかにつながる、という提案である。ただ、住戸プランにもうすこし工夫があればよかったと思われる。
■ 入選:朝田 亮・小柳淳子案 はっきりしたデザインコードの提案はないが、住戸プランに特徴をもたせながら、緑のある外部空間と住戸の配置をモザイク的にレイアウトしてピロティーを設け、湖北における爽やかな街のイメージを創出しているところが評価された。
■ 入選:濱野 忠彦案 これは、住戸そのものが非常に変化のある楽しいプランを提案しているところが買われたといえる。しかしながら、デザインコードと住戸デザインの表現がややリンクしていないように感じるところがある。
■ 入選:岩瀬隆広案 これは、「つながり」ということがテーマになっており、なかでも、緑とのつながりということで、壁面緑化の提案をしているところが評価された。が、住戸プランがやや未消化なところがあり、一考の余地がありそうだ。
■ 入選:井上正子案 瓦屋根の連続という、いたって平凡な案のように見えるが、住戸プランに変化があり、多様な家族構成に対しての住まい方を提案しているところが評価された。また、瓦屋根と格子戸のシンプルなデザインが魅力的である。
■ 入選:金尾 朗案 全エリアを6つのゾーンにわけ、それぞれ、まったく違ったコンセプトにより街区を構成していこうという提案であり、全体を均質化させないようにしようという意図はユニークであるが、その違いがあまりにも唐突すぎる嫌いがある。
■ 入選:橋本 悠他案 これは空をテーマにした案であり、空(夕焼け)を見るテラスを設けるというロマンチックな提案である。「琵琶湖の夕焼け」という自然を共有するというコンセプトは、すばらしいが、やや、現実性に欠けるところがありそうだ。
■ 入選:江南力一案 地域全体を「ニュースタンダード“ジャパニーズハウス”」と「古民家移築エリア」とに分けて街づくりをするという提案が評価されたが、前者の意味とプランの整合性が希薄であり、やや唐突感がある。
■ 審査員特別賞:前田雅之案 住戸プランはシンプルなコートハウスであり、地域を通り別に生垣を3種類の樹種にきめて通りの特徴を出すという提案である。他にもシンボルツリーが街路および敷地の境界に植えられ、湖畔に樹木による街づくりを試みているところがよい。
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